PJCは思い描いていた大会になったか? PJC Phase1を終えて、運営チームにインタビュー

2021年3月21日(日)、PC版『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の国内リーグ「PUBG JAPAN CHALLENGE」(以下、PJC)では、全135試合にわたるPhase1が終了しました。

本大会は、”世界で勝てる日本を目指す”というコンセプトのもと、新たな国内大会としてスタートしています。従来とは大きく方針を転換したPJCは、思い描いていた大会になったのか。Phase1を終えて、運営チームにインタビューを実施しました。

▶前回のインタビュー
日本のPUBG Esportsを世界に認めさせたい―井上氏が語る「PUBG JAPAN CHALLENGE」が目指す姿

井上洋一郎・菊池悠斗
PUBG JAPAN株式会社(以下、PUBG JAPAN)

Nicky
株式会社バーチャルエンターテイメント PUBG SCRIM JAPAN運営(以下、PSJ)

ドレッド隊長(谷康司)
日本エイサー株式会社 マーコム&マーケティング部 部長 Predator担当(以下、Predator)

大津勇人
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 プロデューサー(以下、WPRZT)

※記事中の写真は、撮影時のみマスクを外しています。

予選と本戦、全135試合にわたる大会を終えて

――まず最初に、PJC Phase1の予選から本戦まで、大会全体を振り返っていかがでしょうか。

井上(PUBG JAPAN):
PJC Phase1は、予選70試合と本戦65試合にわたる長い大会でしたが、出場した選手たちの反応から、これだけの試合数を実施してよかったと感じています。

長期にわたる大会本番の中で、各チームさまざまな修正を重ね、試行錯誤しながら試合に挑んでいただくことができました。もちろん長丁場ゆえの困難さもあったかと思いますが、柔軟に対応しながら戦い抜いていただけてよかったと思います。

ドレッド隊長(Predator):
PJC Phase1は運営チームにとっても、「PUBG JAPAN CHALLENGE」という大会名の通り”チャレンジ”でした。けれども、大会のコンセプトに沿った予選と本戦を通して、しっかりと実力あるチームが勝ち残る結果になったと思います。

今回は思うような成績を残せなかったチームも、また次のPJC Phase2では等しく、国際大会の出場権を獲得するチャンスがあります。多くのチームに「次こそは」という勇気を与えられる大会になったのではないでしょうか。

多様なプレイヤーの台頭で、新たな世代が生まれた

――PJCでは試合数を増やすだけでなく、出場条件の緩和なども行われました。まずは、これらがプラスに働いた部分について教えてください。

井上(PUBG JAPAN):
PJCという大会は、より高いレベルで切磋琢磨できる環境をつくり、国際大会で勝てる日本チームを生み出すことを目的としています。ですので、PJCが求めていたことの1つに、新しいチームや選手の発掘がありました。

これについては、年齢制限やチーム人数、海外選手の参加など、さまざまな条件を緩和(※)したことで、今まで出場できなかったプレイヤーたちの活躍が生まれ、非常に良い形になったと思っています。女性プレイヤーの活躍も見られ、選手層に多様性がある大会になりました。

長丁場の大会になったことで、集中力やメンタル、体調管理など、いろいろな面で難しさもあったと思いますが、より上を目指すために必要なものが見つかったチームもあったのではないでしょうか。

※ルールに関する詳細は、「PUBG JAPAN CHALLENGE 参加規約およびルール」をご覧ください。

Nicky(PSJ):
今回はU18プレイヤーで、特に目立った活躍を見せた選手が3名ほどいました。まずは、「BlackBird Xeno」のXouyo選手。彼は現在16歳で、別ゲームの競技シーンへの移行を考えていたところ、年齢制限の引き下げによってPUBGに戻ってきたそうです。

それから、準優勝を獲得した「REJECT」のG0ni1選手も17歳ながら、素晴らしい活躍を見せていました。「Relaxedly」に途中加入して、チームを牽引したpanisya選手も17歳。こうした若い選手の台頭が目立っていたと思います。

井上(PUBG JAPAN):
今挙げていただいたようなU18プレイヤーの活躍は、新たな世代が生まれたという意味で、我々も非常に喜ばしく思っています。こういった若い選手たちの活躍は、どんどん加速させていきたいですね。

また、海外選手に関しても、韓国のプレイヤーである「V3 FOX」Americano選手の活躍は、とても大きなものでした。最近では、韓国選手が日本での活動を視野に入れてチームを探すツイートも多く見かけるようになり、良い流れを感じています。

左から、菊池悠斗さん(PUBG JAPAN)、井上洋一郎さん(PUBG JAPAN)

Phase1で明らかになった課題と、次に向けた改善

――続いて、PJC Phase1を終えて明らかになった課題について教えてください。

菊池(PUBG JAPAN):
まず1つ大きな課題だったと感じているのは、すべての試合を配信できなかったことです。特に予選の配信は、DAY1の次がDAY9になるなど、かなり間が開いてしまいました。本戦も平日は配信できない日があったので、PJC Phase2ではできるだけ大会配信を増やしたいと考えています。

大津(WPRZT):
それに加えて、PJCになってから、新たな選手たちの活躍やストーリーを伝える力が弱くなっていることも課題だと感じます。視聴者の方がチームを応援するきっかけになる魅力を、大会側からもっと発信していく必要があると思っています。

――大会形式について、PJC Phase2に向けて改善を予定している点はありますか?

Nicky(PSJ):
大会形式に込めた意図は、前回のインタビューでお伝えした通りなのですが、特に予選の70試合を総当たりで行うルールに不安要素があることは把握していました。

例えば今回、途中で辞退したのは2チームのみでしたが、辞退するチームの数によっては、総当たりが成り立たなくなる可能性がありました。こうした部分については、参加チームの公平性を保てるように、PJC Phase2に向けて改善したいと考えています。

――予選においては、上位チームと下位チームの実力差が大きすぎるために、どちらにとっても質の良い経験の場になっているか、やや疑問に感じました。

菊池(PUBG JAPAN):
現状、下位チームが上位チームとの試合を経験できる場が公式大会しかなく、シーン全体のレベル底上げのため、できるだけ下位チームが試合数を経験できることを優先していました。

ただ、予選の試合内容については、我々が思っていたよりも、良い環境ではなかったと感じる部分があったことは確かです。今回明らかになった課題については、次のPJC Phase2で対応すべく、具体的なルールの検討を進めています。

出場した選手たちは、新たな大会をどう感じたか

――PJC Phase1を終えて、出場した選手たちからはどのような声がありましたか?

Nicky(PSJ):
予選の終了後、選手にはアンケートを実施しました。先ほどおっしゃっていた懸念については僕たちも把握していたのですが、参加チームのほとんどから「参加して良かった」「次回も参加したい」という反応をいただいています。

どの層の選手からも、「長く戦えることで運要素が減って楽しい」「定常的に大会があることでモチベーションアップに繋がる」という声があり、実際に海外スクリムへの参加が活発化するなど、今まで以上により本気で取り組む選手が増えました。

大会形式に関するところでは、リーグの降格にあたる仕組みが存在しないことで、下位チームも安牌な選択肢を取る必要がなく、積極的にいろいろと試しながら戦えたという反応もありました。

ただ、特に社会人として働きながら活動している選手からは、やはりスケジュールがハードだという声がありました。何を優先すべきか考えつつも、試合の時間帯などの面で、選手たちがより競技しやすい環境を求めていきたいと思っています。

――下位チームを含めて、選手からはポジティブな反応が多かったということですね。

Nicky(PSJ):
はい。特に下位チームにとっては、上位チームがどうやって動いているかを研究するなど、勉強の場になっていたようです。ただ上位チームの試合を観るだけでなく、実際に自分たちが出ている試合で体感することで、大きな学びに繋がったという声がありました。

中には、途中でつらくなったけれど頑張り抜いたというチームもいるので、そういうチームには、最後まで参加してもらえたことに感謝しています。全体を通して、ほとんどのチームに真摯に取り組んでもらえて、滞りなく大会を進行できたので、とてもありがたく思っています。

視聴者数の変化について、どう受け止めているか

――PJCになってから、大会配信の視聴者数が減少していると思います。これについては、どのように受け止めていますか?

井上(PUBG JAPAN):
これには、まず1つ大きな誤算がありました。同期間に開催された世界大会「PUBG Global Invitational.S」(以下、PGI.S)のBOTTOM16は当初、配信されない予定でした。なので、昼はPJC、夜はPGI.Sとなる想定だったんです。ところが、その後BOTTOM16が配信されることになり、PUBG日本語配信の中で視聴者が分散する結果となってしまいました。

ただ、全体的なボリュームで考えても、それ以上に視聴数が下がっていることは事実です。これを真摯に受け止め、改善していかなければならないと考えています。

しかしながら、国内大会を盛り上げるだけでなく、国際大会を視聴するファンを拡大すべきだというのが、PUBG JAPANが考えているグローバルから提示されている最も大きな方向性です。そのためには、間違いなく日本チームの活躍が必要ですから、今はまだその過程にあるという認識です。

――視聴者数の変化について、スポンサー企業からの反応はいかがでしょうか。

ドレッド隊長(Predator):
僕は運営チームの一員であり、スポンサー企業でもあります。その立場からすれば、「この視聴数はどうなの?」と思われても仕方がないと思っています。もちろん僕はそう思わないですよ。なぜなら、一緒にこの大会を作っているから。でも、スポンサー企業にとって、どれだけの人が大会を観ているかは重要な指標です。

正直に言えば、PJC Phase1の大会に関する情報発信は、Twitterからの発信量や内容など、やれることの50%程度しかできていませんでした。スポンサー企業を含め、もっとシーン全体を巻き込んで情報を発信していくべきで、PJCという大会の熱量を伝えるためにできることは、まだまだあると思っています。

左から、ドレッド隊長(Predator)、Nickyさん(PSJ)、大津勇人さん(WPRZT)

エンタメ性と競技性、将来を見据えて求めるべきもの

――視聴数の変化について、他の立場の方からもコメントがあればお願いします。

大津(WPRZT):
僕はPJSから制作に携わっている立場ですが、PJSとPJCで圧倒的に違うのは、ファンのつけ方です。PJSは、わかりやすく選手や出演者のキャラクターを伝えることで、「PJSという大会が面白い」というファンがついていました。一方で、PJCは興行から競技の方向に大きく寄せています。

PJSにおける興行と競技の比率が7:3だったとすれば、PJCはその逆。PJCは、これから日本チームが世界で活躍することで注目を集めていくという、ファン獲得の方向性がまったく違うんですよね。とはいえ、視聴者数が落ちていることは事実で、見せ方など反省すべき点はたくさんあります。

――エンタメ性と競技性、その2つを両立させるところに難しさがあると。

大津(WPRZT):
そうですね。ただ、エンタメ性を優先し続けていくと、日本チームが世界で勝てない状況から抜け出せず、国内のシーン自体が少しずつ衰退していってしまいます。視聴数に繋げていくためにも、日本が世界で勝てる未来を作りたいと強く思っています。

井上(PUBG JAPAN):
PUBGグローバルは国際大会に大きく投資をしていますが、その投資の恩恵を日本は受けられていません。世界大会のPGI.Sでは、億を超える賞金を手にできるチャンスがあるわけですが、日本チームはその賞金に触れることができていないからです。

でも、もし優勝賞金に手が届くような日本チームが出てくれば、国内で大きなニュースになるでしょうし、ヒーローとして扱われるでしょう。PGI.Sでは、優勝に届かずとも多くの賞金を獲得するチャンスが用意されていますから、まずはそういった賞金を争えるレベルを目指したいと考えています。

――スポーツで例えるなら、日本中のファンを巻き込んだ、ラグビーW杯日本代表のような熱狂を目指しているということですね。

井上(PUBG JAPAN):
まさにその通りです。eスポーツに限らずどんなシーンであっても、日本代表が世界の舞台で活躍していれば話題になりますし、負けていればなかなか見てもらえない。それと同様のことだと考えています。

ただ、今すぐに日本チームが世界大会で勝てるようになるかというと、そんなに簡単なものではなく、1年では大きく変わらないかもしれません。でも、日本チームが世界で活躍できるチャンスは用意されていて、そこに向かって本気で頑張っている選手たちがいるという状況は生まれていますので、とてもポジティブに捉えています。

PJCが日本チームの飛躍に繋がることを信じて

――それでは最後に、PJC Phase1を終えた選手たちやファンの皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

井上(PUBG JAPAN):
選手の皆さんには、長丁場の大会を戦い抜いていただいたことに、運営チーム一同、感謝しています。フィードバックにもポジティブなコメントをいただき、非常にありがたく思っています。今後より大会を拡大していくためにも、我々とともに取り組んでいただけると嬉しいです。

また、ファンの皆さんの中には、これまでの大会との変化に戸惑いを感じた方もいらっしゃると思います。しかし、Phase1から出発したPJCが、将来的には国際大会での日本チームの飛躍に繋がるものと信じています。ぜひファンの方々には引き続き、世界で勝つことを目指して頑張っているチームの皆さんを、我々と一緒に応援していただければと思います。

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