日本のPUBG Esportsを世界に認めさせたい―井上氏が語る「PUBG JAPAN CHALLENGE」が目指す姿

2020年から2021年にかけて、PC版『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の日本国内における競技シーンは、大きな転換期を迎えています。

2020年12月、2年10ヶ月続いた国内リーグ「PUBG JAPAN SERIES」(以下、PJS)が、惜しまれながらも終了。2021年からは、新たな国内大会として「PUBG JAPAN CHALLENGE」の開催が発表されました。

なぜ「PUBG JAPAN CHALLENGE」がスタートすることになったのか。そして、この新たな大会で何を目指していくのか――。大会を主催するPUBG JAPANの井上洋一郎さんに、オンラインでのインタビューを実施しました。

また、本大会の運営に携わる「PUBG SCRIM JAPAN」(以下、PSJ)のNickyさんにも同席いただき、大会形式やルールに関する内容についても、その意図を含めてお話を伺っていきます。

井上洋一郎 / @yoichiro808
PUBG JAPAN株式会社

Nicky / @nicky__pon
株式会社バーチャルエンターテイメント PUBG SCRIM JAPAN運営

大きな方針転換が求められる中で生まれた、新たな大会

――それでは最初に、「PUBG JAPAN CHALLENGE」という大会について、開催の経緯を教えていただけますか?

井上:
まず、PUBG JAPANが主催する国内大会が、なぜ「PUBG JAPAN CHALLENGE」(以下、PJC)という名称になったかという理由から、お伝えしたいと思います。

「CHALLENGE」という言葉が何を指しているかというと、それは世界の舞台へ羽ばたく日本チームの”挑戦”。日本チームの実力が、グローバルなPUBG Esportsシーンで認められる世界を目指していきたいという思いを、「CHALLENGE」という言葉に込めています。

関係者と今年目指す世界を共有し、それを表現できる言葉をいくつも出して、最終的に「CHALLENGE」を使おうと決めました。チームが挑戦するだけでなく、我々もまた挑戦するという決意を込めています。

もともと、PUBG Esportsにおけるグローバル全体の流れとして、2019年にほとんどの地域でリーグが終了し、トーナメント形式の大会へと移行しました。その中で、PJSという大会が成長を見せていた日本では、2020年もリーグを継続していたという背景があります。

しかし、2020年の国際大会における日本チームの成績は、取り組みに結果が伴っていない状況となっており、世界大会を頂点とするPUBG Esportsのピラミッドから考えると、日本は世界大会への繋がりが薄く、歪な構造であると判断することとなりました。

PJSが素晴らしい大会であったことは、間違いありません。そのシーンで頑張ってくださったチームの皆様、そのシーンを応援して下さったファンの皆様には、この場をお借りして改めてお礼を申し上げます。

関わっている人は誰しも、続けることができるのであれば、PJSを続けたいという思いはありました。ただ、チームや選手の皆さんの今までの努力に対して、世界大会というシーンでは良い結果が出ていない状況であり、大きな方針転換が求められる中、結果に繋がる座組を模索し、目標を達成するために導き出された結論がPJCだったというのが開催の経緯です。

より高いレベルで切磋琢磨し、強いチームを生み出す

――PJCという新たな国内大会の方針や考え方について教えてください。

井上:
先ほどお伝えした経緯から、日本チームにとって今まで以上に、より研鑽を積める場所を作っていかなければなりません。そのためには、より多くの試合数を、より高いレベルで積み重ねられる環境が必要だという考えが根本にあります。

そうした中で、海外の強豪チームと切磋琢磨できる場として、東アジア統合リーグ「PUBG WEEKLY SERIES:EAST ASIA」(以下、PWS)の構想が生まれました。そして国内では、より強い日本チームを生み出すための大会として、予選と本戦で計135試合を行うPJCを実施します。その上位を獲得したチームに、PWSへの出場権を付与するという流れを作りました。

企業が持つプロチームが参加するリーグには、メリットもある一方で、入れ替えが発生しづらく、全体のレベル向上に繋がりにくい側面もあります。そのため、そうした壁を取り払い、参加条件を満たせばどのようなチームでも参加できる大会としました。その中で、実力のあるチームにPWSの出場権を与えるという考え方になっています。

大会形式やルールにおける、従来からの変更点と意図

――PJCの大会形式やルールについて、具体的な内容を伺っていきたいと思います。まずは、話題に挙がっている試合数に関して教えてください。

Nicky:
PJCは予選と本戦の2つに分かれていて、予選は1チームあたり14日間で70試合、予選を勝ち上がった16チームによる本戦では、13日間で65試合を実施します。

これは先ほど井上さんがおっしゃったように、より多くの試合数で経験を積むことが、何よりも重要だと考えているからです。国際大会に出た選手が、「何百試合のスクリムをやるよりも、1試合の大会の方が得られるものは多い」と言っていましたが、その言葉の通り、大会本番の試合をより多く経験することに意味があります。

また、各チームの対応力を強化する意図から、予選は8チームを1グループとする総当たり形式を採用しました。

同じチームと戦い続けていると、敵チームの動きを把握しやすく、メタの固定化が起きます。他チームを分析して最適な動きをする能力も必要ですが、事前情報が少ない状況で戦い、さまざまな状況に対応できる力を身につけることは、日本チームの実力底上げに繋がると考えています。

――選手の出場条件に関して、従来と比べて変更された点について教えてください。

Nicky:
出場条件については、PWSで設定されたルールに準じて、年齢制限が15歳以上(高校生以上)に引き下げられました。チーム人数は、リザーブを含めて8人まで登録可能となり、出場選手の交代もより柔軟に行えるようになります。

また、外国人選手については、居住地域がPWSのエリアにあたる日本・韓国・チャイニーズタイペイ・香港・マカオであれば、国籍を問わず登録が認められます。試合に出場する選手の少なくとも半数が日本人選手であれば、ロースター登録する海外選手の人数は問いません。(居住地域の条件等は、今後の情勢により再検討される可能性があります)

このように、PJCの出場条件に関しては、これまで出場が制限されていた選手への可能性が、より開かれる形になりました。海外選手を引き入れることによっても刺激が生まれ、より国内シーンのレベルアップに繋がると考えています。

――その他にも、PJCの方針に沿って定められた部分があれば教えてください。

Nicky:
PJCの賞金は、総額510万円に決定しました。この賞金の配分については、 出場チームに広く行き渡ることよりも、実力ある強いチームがより多くの賞金を獲得できることを重視しています。

優勝と準優勝のチームに賞金が授与されるのは従来と同じですが、試合数が大きく増加する中で、長期にも短期にも目標を持って試合に臨んでもらうため、本戦では週間優秀賞やドン勝賞を設けています。

※大会形式やルールに関する詳細は、「PUBG JAPAN CHALLENGE 参加規約およびルール」をご確認ください。

新たなシーンに移行する中での懸念をどう捉えている?

――PJCという大会へ移行するにあたって、コミュニティからはいくつか懸念も挙がっているように感じます。まず1つに、試合数が大幅に増えたことで、参加できるチームが減ってしまうのではないかという声です。

井上:
まず、PSJさんが運営しているスクリムでは、平日の夜に多くのチームが参加していることを認識していました。なので、可能な限りスクリムに近い時間帯に開催すれば、大きな障壁にはならないと考えたことが1つです。

もう1つには、先ほどNickyさんからご説明いただいたように、試合数を増やすと同時に、出場に関するさまざまな条件を緩和しています。これによって、スケジュールの調整がつきづらい選手に対しても、可能な限り門戸を開くことができると考えました。

Nicky:
試合数を増加させる影響で、申請チームが減る可能性については、予め想定していました。それでも、国内シーンの現状を変えていくために、試合数の増加は間違いなく必要なもの。より厳しくなる環境の中でも、頑張っていきたいという意志を持つチームのために、僕らもできる限りの対応をしていきます。

例えば、平日の夜に開催される予選では、仕事の都合で試合に間に合わないケースなどが起こりうると思います。これに対しては、参加できる時間の試合から選手を交代して出場することも可能ですし、一定の試合数までは3名で出場することも認めています。

なお、結果的に今回のPJCには63チームの出場が確定しました。各チームは平均5~6名の選手登録をしているので、総参加選手数は339人と、見かけのチーム数以上に多くの選手が本大会に参加いただけることとなりました。

――PJS終了後、いくつかの主要なPUBGチームの解散が発表されました。これについては、どのように捉えられていますか?

井上:
それぞれの事情で解散するチームがあり、それはとても残念なことなのですが、我々としては切磋琢磨する環境に飛び込んでくれるチームが増えるよう、できる限り門戸を広げています。新しい選手やチームがどんどん入ってくる好循環を目指したいですし、これまで頑張っていた選手やチームには、機会があればいつでも戻ってきていただきたいと思っています。

実際に、PJSに出場していた「Unsold Stuff Gaming(USG)」は、PUBG部門の再始動に向けて動き出されており、「AXIZ」のようにPJS終了後にPUBG部門を新設されたチームもあります。なので、必ずしもネガティブに捉える状況ではないと考えています。

――これまでPaRに挑む選手にとっては、半年に1度しかチャンスがないことがネックになっていました。それに相当するチャンスは、2021年の間にどれくらいあるのでしょうか?

井上:
2021年にはPWSが2回開催される予定で、その出場権が付与される国内大会のPJCが2回行われる予定です。間もなく1月30日からスタートするPJCが、その1回目にあたります。

チャンスの数自体はPaRと同様に年に2回ですが、その内容は大きく変わりました。これまでPaRであれば2日間、各日6~8試合の中で結果を出す必要がありましたが、PJCの予選では14日間70試合が行われます。

今まではPaRを突破してからGrade1まで、最速でも2つのPhaseが必要で、タイミングによってはGrade1に辿り着くまでに、長い期間を要するケースもありました。PJCにおいては、どのチームにとってもチャンスは平等。大会を勝ち抜く実力さえあれば、一気に国際大会への切符を掴むことも可能です。

また、PJCはオープントーナメントなので、すべてのチームが予選から戦います(国際戦に出場しシードを獲得したチームを除く)。つまり、これまでPaRにチャレンジしていた選手たちにとっては、Grade1で活躍していたトップチームとも混じって、より高いレベルで70試合の経験を積めるということです。これは確実に、国内シーン全体の底上げに繋がると考えています。

日本のPUBGシーンを支えてきた3社との協力体制

――主催するPUBG JAPANを含め、PJCの大会運営を支える体制について教えてください。

井上:
PJCでは、我々と同じ気持ちで取り組んでいただける企業の方々に、大会を運営するプロジェクトチームの一員として携わっていただいています。

PJSの頃から大会配信を作っていただいているRIZeSTさん、長きに渡ってスクリム運営をしてくださっているPUBG SCRIM JAPANさん、そしてPJSの頃からPUBGのシーンを深く理解してくださっている日本エイサーさん。

どの企業も、それぞれの立場からこれまでのPUBG Esportsに携わっていただき、応援してくださる皆さんです。この3社の皆さんと、ともに大会運営を行っていく体制で進めています。

これまで国内のシーンを支えてきた皆さんと力を合わせて、日本のPUBG Esportsを世界に認めさせていきたいと思っています。

日本チームの力を磨いて、世界を見返したい

――それでは最後に、国内のPUBGシーンで活動する選手やファンの皆さんに向けて、メッセージをお願いいたします。

井上:
我々としては、PUBGグローバルにギャフンと言わせられるくらい、国際大会で日本チームが大活躍しているシーンを作り上げたいと思っています。そのために必要なことを考え、PJCという大会の場を作りました。

選手の皆さんには、ぜひこの意気込みを汲んでいただき、切磋琢磨してより高いレベルのシーンを作れるように、勝ちたい気持ちを持って、我々とともに取り組んでいただけると嬉しいです。

ただ、皆さんご存知の通り、世界の壁はとても高いです。日本はまだまだそこにチャレンジしていく段階で、大会形式を変えたからといって、すぐに追いつけるほど簡単なものではありません。

応援するファンの方々の声は、選手たちの力になります。今まで以上に厳しいチャレンジに挑む決意をしている選手たちへ、我々と一緒に、より一層の応援をよろしくお願いします。

――井上さん、Nickyさん、ありがとうございました!

■関連リンク

PUBG Esports 日本公式Twitterアカウント
PUBG SCRIM JAPAN 公式Twitterアカウント
Predator Gaming(日本エイサー)公式Twitterアカウント
RIZeST 公式Twitterアカウント

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